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【4】IT企業を2年で辞め
沓澤さん 大学卒業後、あるIT系の大手企業に就職しまして。

シマジ会長 どんな?

沓澤さん 海外向けOEMサーバー製品の生産、保守です。2年で辞めましたが、8か月研修で勉強させてくれたので、それが財産になりましたね。

シマジ会長 転職したの?

沓澤さん いえ、自分でいろいろものを売ってみました。でもうまくいかないんです。

中尾さん 沓澤も大変なのに、僕の会社に取引先を紹介してくれたりもしていました。

沓澤さん 2、3年がんばってみました。貧乏には慣れていたので。


【5】貧乏なのに不自由ではなかった
シマジ会長 家は貧しかったの?

沓澤さん 父は高校卒業後、上京して働きながら夜間の専門学校に行き建築士の資格をとっているんです。その後私たちが生まれて秋田に帰ったんです。ご存知かもしれませんが東北の田舎は薄給で…父もそうな上に、超がつく倹約家でした。外食もほとんどなかったですし。

シマジ会長 昔は特別なものだったからなあ。

沓澤さん 夏休みが終わって学校に行くと、みんな旅行の話をしていたりしますよね。私はそんなこともなかったので、黙っていました。服は兄のお下がり。子供の頃はうちは貧乏だとずっと思っていました。

シマジ会長 ふむ。

沓澤さん でも不思議なことに、不自由があったわけではないんです。大学も私立に行けたし。

シマジ会長 仕送りが大変だったろうな。

沓澤さん そうなんですよ、それも兄と二人分。でも、どうやっていたんだろう?って思うのは仕事を始めてからで、大学時代は脳天気に過ごしていました。

シマジ会長 東京の私大、生活費も二人分か。

沓澤さん 父に聞いたことがあるんですよ。「残してやれるものなんてない。子どもが自分の可能性に賭けたい、と思うチャンスを手に入れるようにしてやりたい」それだけで私たち兄弟が産まれて以来、ずっと我慢して貯めてたんです。


【6】なんとか返したい
シマジ会長 それが親だよ。子どもの頑張っている姿を見るのは幸せだったと思うよ。

沓澤さん でも、それを知ったら、なんとかしてもらったこと以上のことしたいと思いました。それには普通にサラリーマンやってもだめだ、自分で何かしなくては、と思ったんです。そういう自分でやるビジネスの世界でがんばっていたのが中尾でした。

シマジ会長 最初からうまくはいかないだろ?

沓澤さん 6畳一間のアパートの中、とにかく苦しくて。「このままじゃ飯が食えないぞ」と思いました。

シマジ会長 一人だったんだろ?子どもも女房もいたら大変だよ!(笑)


【7】救いの手、韓国企業
沓澤さん その頃は一人でしたから。ところが救いの手がきたんです。たまたま知人から「韓国企業が日本法人を立ち上げるから、そこの責任者にならないか?」と。

シマジ会長 韓国語ができたんだな?

沓澤さん いえ、全くできませんでした。

シマジ会長 ガッハッハ!

沓澤さん 韓国料理も食べたことがないくらい。最初は通訳がいたのでなんとかなりましたが、いずれいなくなって大変でしたよ。

シマジ会長 何を扱ってたの?

沓澤さん 当時携帯の電波が悪かったんです。対策は基地局を作るか、電波を増幅して飛ばせる機械を置くしかない。基地局を作るのは高いが、機械を設置するのは安い。そのほとんどは実は韓国製だったんです。

シマジ会長 しかし、基地局ができたらいらなくなるだろう?一気に大変になるよなあ。

沓澤さん ええ。震災の年に売れ行きがどんどん悪くなって、4億円の売上が2億になり、1億になり・・・。最後は、私も「人件費がもったいない、日本人はもういらない」と。

 
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